ミロク製作所トップインタビュー

年間の銃生産量は12万丁に上ります
そのほとんどは世界各国に輸出しています

年間12万丁の銃を世に送り出し、世界のトップメーカーとして走り続けるミロク
そのミロクグループのハブ的な役割を果たすのが、捕鯨で有名な高知県南国市にある
ミロク製作所である。 捕鯨砲の製造からスタートし、猟銃の国内最大手となった
同社のトップ弥勒美彦氏に、 弥勒の真の姿をうかがってみた。

まず最初に、ミロク製作所の生い立ちを簡単に教えて頂けますか。
弥勒:ミロク製作所としての歴史は、初代社長の弥勒武吉から始まっています。 武吉が第二次世界大戦中に身につけた大砲の技術をベースに、様々な工夫をして捕鯨砲を作ったのです。 当時の捕鯨砲はノルウェーからの輸入品で、非常に高価だったため、武吉が製造した捕鯨砲はよく売れて、 国内でかなりシェアを取ることができたのです。そこで得た利益がミロクを大きく飛躍させる原動力となったといえますね。

捕鯨銃の技術がその後の銃作りに活かされたということですね。
弥勒:基本的にモノを発射して遠くに飛ばすといった観点からみれば同じですが、 銃と捕鯨砲は大きさもメカニズムも異なります。そのため、銃生産に捕鯨砲の技術が活かされたことは そんなに無いんです。ただしミロクが作っていた、学術研究用の鯨に標識を撃ち込む標識銃を見た当時の 川口屋林鉄砲店から、猟銃製作の依頼が来たというのは、銃製作のきっかけとなっているのは確かです。

ミロク製作所における銃の年間生産量、または輸出の割合はどの位ですか。
弥勒:ショットガンとライフル合わせて、年間約12万丁です。そのうち輸出が99%で、アメリカへの 出荷が一番多く80〜85%を占めています。残りはヨーロッパで、さらにその1%がオセアニアということになります。

ミロク銃のほか、ブローニング銃も生産しているそうですが、ブローニングブランドのオーナーである ベルギーFN社がミロクに求めているのは、どの様な技術ですか。
弥勒:ブローニングには、ポルトガルとアメリカに自社が所有する工場があります。 そことミロクが違うのは、ミロクは独立した会社ですので、開発・生産技術など、銃の製造以外の品質を高める 部署があることなのです。そのため、我が社はブローニングの開発部門と密接に連携を取り、 新製品を短期間で市場投入にできるようにすること、つまり量産に向けた開発力や問題解決能力、製造に対する 匠の技が求められているのです。

全ブローニング銃の何%が、ミロクで作られているのですか?
弥勒:ショットガンの上下2連銃、ボルトアクションライフル銃をはじめ、目下8機種を100%製造しています。 さらに、ウインチェスターブランド銃の一部も作っているんです。

ミロクで作られている銃は美術工芸品としての要素を持ち、仕様も多いため、手作りを必要とする生産工程が多いそうですが、 熟練工の持つ高い技術はどのように若手に継承されているのですか。
弥勒:実は2003年4月にISO9000を取得したのですが、目的のひとつに熟練工の持つ技能の伝承をより確実にしたいということがありました。 これまで職人技は個人の胸の内にある部分が多かったのですが、なるべく文章あるいは写真などに残し、 確実に伝承するための対策を採っています。また計画的、教育的な人事異動、つまりOJT(On the Job Training)ですが、 これも採用しています。将来その部署を担ってもらいたい人には、生産現場の全体を見渡せるよう、 その前後の工程を経験する多能工となってもらっています。

ミロクには高級ミロク銃を作る高級銃係という部署があるそうですが、ベーシックな銃と何が異なるのですか。
弥勒:人はひとり一人腕の長さなどが違うので、銃の台木などは本来オーダースーツのように合わせて作るのがベストです。 ところが実際にそれを流通させるのは難しいのです。そのためオーダーメードという究極の銃が高価ながら存在します。 もちろん価格が高くなれば求められる品質も高くなります。そうゆうことから選りすぐりの熟練工を高級銃係に配置しているんです。 そこに従事しているのは専属1名と業務者1名の1.5人となります。台木の調達から特別なルートとなり、各部品へのクロームメッキ、 そして作業もほとんど手作りとなるので月に5丁組み上げるのがやっとなんです。とはいえフルオーダーですと4〜6か月かかるので、 他にセミオーダー、基本モデルの高級銃を用意して納品までの時間短縮を図っています。

銃の製造で培ってきた技術が、自動車部品や工作機械に反映されていると聞きましたが、具体的にどのようなものなのですか。
弥勒:精度の高い銃作りのため、ミロクは銃身に細く長い穴を開けるガンドリルマシンを車内のの生産技術として開発しました。 現在そのガンドリルマシンを自動車関連や金型関連企業に販売しているのですが、 おかげさまでガンドリルマシンとして約70%のシェアを持たせてもらっています。またトヨタ自動車の高級車に装備される、 クルミ材削り出しのウッドステアリングやシフトノブなども、銃床作りで得た特殊な技術を活かして作っています。

最後にミロクとして、B.C.ミロク銃に対する今後の展望をお聞かせ下さい。
弥勒:ミロク銃は会社として自由にできるブランドですが、ブローニングとの契約の問題もあるので、 ミロク銃を作る数に限りがあります。その中でユーザーの声を取り入れた、今までにない高い付加価値を持たせた銃を開発していきたいですね。 それを実現する開発力や技術力の高さこそ当社の強みですから。

潟tォーバイフォーマガジン社 発行
スポーツガンガイドブック2004掲載記事より抜粋