制御機械と匠の技が融合したレシーバー部の製作工程

 レシーバーもまた調質済みの鍛造材から削り出されている。まずはフライス盤で4面が削られ、 内部はコンピューター制御のCNCによって削り出し加工される。この作業はほとんど無人の機械によって仕事が進められ、 内部の形状はほぼできてしまう。銃身元部のラグのはいる所は、ブローチと呼ばれるその形状に作られた刃物を通じて仕上げられる。 その後、前後から撃針穴やハンマーコッキングロッドの通る穴が加工され、NCロボットによる面取り加工で作業を終了する。
 レシーバー製作の工程で唯一、人の手が入れられているのは、包底面の強度を上げる焼き入れだ。作業を終えた包底面を見れば、 同サイズの真円で正確に焼き入れられている。てっきり高周波焼き入れを使った機械設備で行われていると思いきや、 そこにはベテラン職人さんがガスバーナーで包底面を焼いている姿があった。包底面より2mmほど高く水を張り、ガスバーナーの炎を当てている。 勢いの良いガスバーナーの炎が水面を押し分けて包底部を焼き、ガスバーナーを離すとすぐさま水がかぶり焼き入れが行われるという仕組みである。
 ガスバーナーと水槽だけで見事な仕事をする職人芸、ここは感動のシーンであった。

絶妙なヤスリさばきで実現するバレルとレシーバーの組み立て調整

 この時点から各銃には仕様書が付いて廻る。仕様書上ではすでにシリアル番号が決定されているのである。 バレルとレシーバーは、そのまま無調整でも組み上げることができる加工精度に仕上がっているが、ほんの僅かにバレル側が大きく作られており、 それをベテラン職人がヤスリで削りながら丁度良いクリアランスに調整する。調整の精度は半端ではなく、 クリアランスの必要な所は紙一重、ピッタリ合わせる所はほんの僅かでも光が漏れてはならないのである。 実際に紙一重の部分には薄い紙が挟んであり、指で引いても抜けないほどだった。
 また銃身を折るときに所定の重さで可動するよう、サイド部分のクリアランスも徹底的に調整が繰り返される。
 組み立て調整が終了すると、銃身がレシーバーに合わさった状態で側面外側の段差仕上げの研磨が行われ、 外面の段差は完全になくなってしまう。次にヒンジ穴がトモ加工され、後にレシーバー側のピンが圧入されて仕上げとなる。 機械による加工はここまでで、次は木部の到着を待つことになる。